2015年10月29日木曜日

Bulletproof Musician: 「視点」を変えれば現実は変わる

Bulletproof Musician という英語のサイトの記事を、ランダムに翻訳するシリーズです。
ミュージシャンのメンタル面に関する内容を扱っています。
音楽をやっていない方でも、自己管理やマインドの問題に興味があるなら、是非ご一読下さい。

How to Change the Way You Feel About Auditions

http://www.bulletproofmusician.com/how-to-change-the-way-you-feel-about-auditions/

"感じたものが真実だ"と言います。
先日読んだ本のなかに、こんな場面がありました。

地下鉄に、男が乗ってきました。
連れられた子供たちは大声で泣いています。
男は気づいているようですが、素知らぬ顔で宙を見つめています。
乗客はみな迷惑そうにしています。
しばらくして、著者は男に、子供たちを静かにさせてくれないかと頼みました。
すると、男はハッとして、説明をはじめました。
じつは病院からの帰り道で、数時間前に妻が死んだのだ、と言います。
途方にくれていて、子供達も混乱しているんだと思う、と。

このの著者の気持ちを想像してみて下さい。
それまでイラついていた感情が、一瞬にして同情へと変わったことでしょう。


「視点」を変える

これは極端な例です。
しかし、もしコンサートやコンクール、オーディションに対する「視点」を変えることができたら?
ネガティヴな感情を前向きに変化させ、状況を楽しむことも可能ではないでしょうか?

もちろん、可能です。
単純に、新しい「視点」を見つけだせばいいのです。
自分にしっくりきて、ポジティブにステージに向かえるものであれば、何でもかまいません。
それが正しいかものかどうかは関係ありません。
視点」の正当性を検証したい欲求はおさえて下さい。
冒頭の例でも、男の妻が本当に死んだのかは重要ではありません。
じつは、男が会社をクビになったり、妹が交通事故にあったのかもしれません。
ポイントは、「視点」が変われば感じ方も変わるということです。

具体例をあげてみましょう。


ステージに対する「視点」

演奏は観客へのプレゼントだ、と言うミュージシャンがいます。
その「視点」でうまくいくならかまいませんが、私の場合はしっくりきません。 
私は、人前で演奏することを、特権であり、貴重な体験だと考えています。

最近会ったある役者は、このことをより明確に意識していました。
彼は、人前で演じるのをいつも楽しんでいる、と言います。
観客がいなければ、大声でひとりごとを言いながら空想の世界にいるようなものだからです。
自分自身に向けて演奏するだけで、誰にも聞かれることのない人生なんて、想像できますか?



オーディションに対する「視点」

信じてもらえないかもしれませんが、私は、本番よりもコンクールやオーディションのほうが好きなのです。
もちろん、緊張します。
それでも好きなのは、そこには理想のオーディエンスがいるからです(このことについての議論はなしです。目的は、自分に合った「視点」を見つけることなのですから)

理由1:真剣である

第一に、審査員ほど真面目な観客はいません。
ふつう、観客というのは、演奏の途中で席を立ったり、居眠りをしたり、プログラムを読んだり、Facebook を開いたりするものです。
ひょっとすると審査員たちも、コンサート会場では同じかもしれません。
しかし、この場では、座って私の演奏を聴くことが仕事なのです。
こんな状況は、なかなかありません。

理由2:耳が良い

第二に、彼らは音楽をよく知っています。
演奏のディテールを聞き分ける耳を持っているのです。
たとえば、微妙な弓使いの違いや、レガートのニュアンス、強弱の陰影、ブレスの工夫、細かいアクセントやフレージング、など数えればキリがありません。
これらは、一般的な観客にはわかりづらいものです。

オーディションのメリット

当然、これは諸刃の剣でもあります。
十分に練習していない、表現力が足りない、技術面にしかフォーカスしていない、 といった場合には、みじめな結果になるかもしれません。
反対に、じっくりと曲に取り組み自分のものにしているなら、どうでしょう?
コンサートに来る一般的な音楽ファンは、細かいニュアンスまではおそらく聞き取れません。
実際のところ、平均的なミュージシャンでも無理でしょう。
聞き手側も同じ楽器を演奏し、なおかつ曲を熟知していなければ、十分な理解は難しいものです。

私の体験を話しましょう。
先日、 パーカッションの模擬オーディションを見に行きました。
曲目は、プロコフィエフの作品からの抜粋で、演奏者はスネアドラムを小さな音量で鳴らしています。
そこは難しいパートだと事前に聞かされていました。
しかし、軽々と演奏している姿を見ただけでは、難しいとは思わなかったはずです。
終わってから、彼は使用したマレットの細かい違いについて説明してくれました。
その説明がなければ、私はそうしたディテールについては分からなかったでしょう。

もっと驚くような例が、こちらです。

バイオリニストがストリートで演奏しています。
映像からでも、彼が素人ではないとわかりますが、ほとんどの人が素通りしていきます。

実はこのミュージシャンは、ジョシュア・ベルです。
彼は世界的バイオリニストの1人であり、このたった3日前にはボストンのホールを満席にしています。

ここから分かるのは、多くの人は一流の演奏を見分けることができないという事実です。
私がパーカッション演奏の違いがわからなかったように。
異論もあるでしょう。
しかし、繰り返しますが、目的は有効な「視点」を見つけることですから、議論はなしです


特権

人前で演奏できるのは特別なことです。
さらに、目の前にいるのが優れた聞き手だとしたら、しかもそれが1人ではなく何人も集まっていたら、どれだけ幸運なことでしょうか。 
そこまで良質な聞き手が、時間をさいて自分の演奏に耳を傾けてくれることは、まずないでしょう。
これ以上の観客は望めません。

曲に時間をかければかけるほど、自分のアプローチに自信が出てくるものです。
さまざまな弾き方や指使いを試し、音のイメージも明確になってきます。
私は、その違いを誰かにわかってほしいと願います。
ときには、自分の解釈が受け入れられないことがあっても、だれにも気づかれないよりはマシです。
それは、ジョークを言っても、誰もそれがジョークだと気づかないようなものですから。


自分の「視点」を見つける

これらの「視点」は、あくまでも一例にすぎません。
しっくりくるものは人それぞれですから、自分に合う「視点」を見つけてください。
目的は、よりよい演奏をすることです。 
ただ現実を見つめるだけでは、何も起こりません。


The one-sentence summary

“現実は動かしがたいように見えるが、実はただの幻想に過ぎない” - アインシュタイン

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