2016年8月23日火曜日

ニューオリンズはリベラル

ニューオリンズ=黒人の町、というイメージを持つ人もいると思います。
なんといってもリズムの町ですからね。
バーのジャズピアノ弾きはなんとなく黒人がサマになるし、クラブで朝までファンキーに踊る黒人の写真などを見たこともあるでしょう。 
でも実際には、白人と黒人がだいたい半々くらいの割合で住んでいます。

一般に、いまだに黒人は差別されていて、白人よりも社会的に弱い立場にいる、と言われています。
ニューオリンズでも、統計では、黒人の方が収入は低いし、社会的地位にも恵まれていません。
黒人が住む地域ははっきり分かれていて、犯罪発生率も高く、危険とされています。
実際に黒人街に行ってみると、風景もさびれているし、白人の姿は見かけません。
僕が行ける地域はまだマシで、貧困層の黒人が住むゲットーのような地域もあり、そこでは犯罪も日常的で、問題となっています。


でも、4年間ニューオリンズで暮らす中で、「差別」を肌で感じたことは、実はありません。
町中どこへ行っても、誰もが垣根なくフランクに交流している。
一部の黒人居住区や白人の住む高級住宅街をのぞけば、人種は混じって暮らしています。
町の中心部では、黒人も白人も同じようにして一緒に働いています。
いわゆる3Kの仕事であっても、黒人ばっかり、ということはありません。
よく明け方にストリート演奏の場所取りで道に座ってると、ゴミ収集車が通ります。
車に乗っているのは、白人と黒人は半々くらいでした。


社会状況としては、問題もあります。
大きく眺めれば、まだまだ差別は残っている。
政治や経済について不満や意見もあるでしょう。
でも、個人として接する時には、相手に偏見を持たない。
僕自身も、イエローとして差別された経験は、一度もありません。
そういう視線を感じたり、珍しがられるようなことも、ありませんでした。
もともと様々な人種が暮らしている町ですからね。
人種や職業や地位や肩書きに関わらず、誰でも受け入れてくれる。
そういう、オープンでフラットでウェルカムな空気が、ニューオリンズなんです。


この自由な空気は、アメリカ南部の町としては例外的なものです。
南部は保守的であり、人種に対する偏見も根強くあると言われます。
そんな中、ニューオリンズは、まるでニューヨークやサンフランシスコのような、自由な空気があふれている。
ちょうど僕の留学中に、オバマが大統領に選ばれました。
ニューオリンズでは、あちこちで歓声があがり、その夜はお祝いムードであふれました。
でも、ルイジアナ州を含む南部の多くの地域は、反対勢力の共和党を支持してたんですよね。
南部でオバマを支持したのは、ニューオリンズと、あとはテキサスのオースチンなど、一部の町だけです。

また、歴史をふり返ると、ニューオリンズは奴隷制の拠点でした。
港町なので、船で連れてこられた黒人たちが降ろされ、奴隷市場で競売にかけられます。
そこで買われた奴隷たちは、プランテーションと呼ばれる近隣の大農場で働かされました。
彼らは、休日には町の広場「コンゴ・スクエア」に集まり、太鼓を叩いて踊ってウサを晴らしたそうです。
それが、ニューオリンズ音楽の源流のひとつとも言われています。


こんな地理的、歴史的バックグラウンドがあるのに、白人も黒人も同じようにして暮らしている。
けっこうすごいことだと思います。
僕の場合、音楽周辺の人たちとの交流が多かったからかもしれません。
ミュージシャンには、リベラルなタイプが多いですから。
それでもやっぱり、僕が訪れたアメリカの他の町と比べて、人種間の偏見は圧倒的に少ないと思います。
おおらかで自由な空気は、ニューオリンズという町の個性なんです。


その居心地のよさが、多くのミュージシャンをひきつけ、受け入れ、「ガンボ(ニューオリンズ名物のごった煮料理)」に例えられる独特の文化を形成してるんです。
この空気感は、行ってみないとわかりません。
データ上では、保守的な南部にある、犯罪率も高い、奴隷制ゆかりの田舎町なワケですからね。

南部の一都市にも関わらず、人種的偏見も少ない、あったかい町。
その特殊性が、ニューオリンズの魅力です。

0 件のコメント:

コメントを投稿