いつも失ってから後悔する

昨晩、ライブを終えて自転車での帰り道、高円寺を通りました。
駅からあづま通りをのんびり抜けて早稲田通りを渡って、中野方面に行くと、あれ?景色が変わってる。なんだ、新しい店か。でも待てよ?
と思って、自転車を止めて戻ってみると、そこはハンバーグの店「豆の木」があった場所じゃないですか!

ショックでした。
大好きな店だったんです。
かれこれ15年〜20年くらい前、ちょうど「豆の木」がオープンした時、すぐ近くに住んでいました。

新しくできた店なのに、オシャレでも綺麗でもない、昔からあるような雰囲気でした。
ハンバーグが確か600円くらい。
20年のあいだに値上げしたのかは覚えてません。
見た目はごく普通でまったく期待させないのに、実は独特のソースがやみつきになるくらい美味い。   

小さな店でした。
すごくいい雰囲気の夫婦がやってたんですよ。
人のよさそうな、すごくすごく素敵な。
ご主人が中で調理して、カウンターごしに奥さんに渡す。
なんか、別に何を話すわけでもないんですが、ふたりの雰囲気、立ち振る舞いが、すごく暖かくて、行くたびに幸せな気持ちになりました。
こうして書いていても、ふたりの笑顔が浮かんできて、たまらなくなる。
お店で接客を受けて、その接客というか人柄というか雰囲気が素敵すぎて忘れられない。
そんなの、めったにありません。
(もう一人、むかし渋谷にあった「サバラン」というレストランのウェイターのおじさんも忘れられません。あの人がいるから食べにいってましたからね。ビルの火事で閉店してしまったけど、いまあの人がいる店がわかれば、そこに食べに行きたいです。もし知ってる人いたら、教えてください。)

家に帰って調べたら、なんと2月末に閉店していたようです。
そんな前だったとは。
知らなかった自分が、なさけない。
前回行ったのは、いつだったのか。
その時もしばらくぶりで、「昔は近くに住んでてよく来てたんですねー」なんてことを帰りがけに奥さんと話しました。
なんでこんなに長いあいだ、行かなかったんだろう
好きな店には、なるべく行こうと思っているのに。
口先だけか。
閉店前に、また会いたかった。
ああ悲しい。

高円寺で時間があれば、「福助」「やなぎや」「ごん」「豆の木」のどこかで食べます。
といっても、しょっちゅう高円寺に行くわけじゃないし、行っても食事をするとは限らない。
「ごん」も、しばらく前に行ったら、閉店時間が早まってたなー。
どの店も、そろそろみんな年をとって、あと10年、いや5年も経ったら、どうなってるか分からない。

僕は19歳から7年間くらい、高円寺のあづま通りに住んでたんです。
早稲田通り手前の風呂なし鉄筋マンションと、早稲田通りを渡ってすぐのアパートと。
サンコー、ミンミン、カンパネルラ、甲州屋、名前忘れたけど貸本屋、名前忘れたけど角にあった服の直し屋。
ざっと思い出すだけでも、これだけの好きだった店があづま通りから消えてしまった。
福助もやなぎ屋も、がんばってるな。
もっと寄るようにしないと。

好きな店に行ったらなくなっていた、というのは、とても悲しい。
だって、閉店を知らないということは、それだけご無沙汰だったわけです。
自分がたまーにしか行かなかったくせに、なくなって悲しむなんて、なんて身勝手なことか。
そんな自分はいやだから、好きな店にはできるだけ寄ろう、と思ってるんですが、今回の「豆の木」はだからすごくショックでした。
半年も行かなかったことを、後悔しています。
悲しむ資格なんて、本当はありません。



昨日のライブで、店のマスターと話していて、いまみんな集客が大変だ、という話になりました。
昔のことは知りませんが、たしかにみんなライブ行かないよなーと思います。
行くのは、「仲間」感のあるライブだけ。
ミュージシャンとお店と含めて、ある意味サークル的な雰囲気のところにしか、行かない。
知らないライブや、知ってるミュージシャンのライブでもやる内容が変わると、もう行かない。
そんなもんですよ。

僕はけっこう、意識してライブを見に行くようにしてます。
で、行くと、驚かれたりするんですよ。
それくらい、人のライブをお金払って見に行くミュージシャンが少ない、ってことです。
そんなの、おかしいと思う。
狂ってる。

実際、大好きな素晴らしいミュージシャンのライブに行って、あまり客がいなくて驚いた、という経験を何度もしています。
いい音楽なのに。
逆に、内容はよくなくても、サークルっぽく楽しい雰囲気でなあなあとしてるライブの方が、お客が来たりする。
いつもだいたい同じ人。
それって、音楽聴きに来てるんじゃないんですよ。
音楽なんて、つまみみたいなもんで、みんなあんまり興味ないんですよ。
酒飲んでワーって騒いでスッキリすればいいんですよ。


お金落とさないと、それは消えるよ。
ライブ行かないと、その人は消えるよ。
「豆の木」は、もうない。
僕がお金を落とさなかったから。

いや本当は、年を取って引退しただけかもしれないけど、最後に行かなかった僕には知りようがなくて、その知りようがない、という状態になってしまった自分を、後悔してるわけです。

いい音楽がそこにあるうちに、聞きにいったほうがいいよ。
なくなってから、後悔するから。
「豆の木」がなくなって、僕は後悔しました。


コメント

  1. 私も「豆の木」には非常に思い出があり、思わず涙が出てしまいました・・・
    あの素敵なご夫婦のお店だから、通っていました。

    懐かしくて、寂しくて、思わずコメントしてしまいました。

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  2. コメントありがとうございます。
    そうですね、とても素敵なご夫婦でしたよね。店の雰囲気にも、味にも、人柄がでているような。「美味しい店」はいくらでもありますが、豆の木のようなお店は少ないですよね。
    今はネットでなんでもお得に買えて便利ですが、「モノ」だけでは、寂しい気がします。

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