2016年6月6日月曜日

Eric Bibb

90年代後半、新世代ブルースマンが一斉にシーンに登場してきました。
ベン・ハーパー、ケブ・モ、コーリー・ハリス、ガイ・デイヴィス、アルヴィン・ヤング・ブラッドハート、等々。
そんな中で僕が断然好きなのが、エリック・ビブです。 

スウェーデン在住の黒人ミュージシャン。
実はキャリアも長く、70年代から活動しています。
ブルースの枠に分類されがちですが、音楽的にはフォークなどの要素も強く、「ブルース」のゴツゴツした感じや泥臭さは希薄です。
たぶん、黒人だからブルースに分類されてるんじゃないかな。
白人だったら、「ブルースの影響を受けたシンガー・ソング・ライター」だったんじゃないか。
と思わせる音楽性です。

シャウトもチョーキングもなし。
バンド編成の録音は少なくて、ほとんどがアコースティックの弾き語りに少し楽器を加えたくらいで、まあ地味です。
ストリング・バンド編成のアルバムも作ってます。
でも、そういう音楽的な形式とは別に、ジワリと迫ってくる、やはり「ブルース」と呼びたいような何かがある。
ゴスペルやスピリチュアルに近い感覚かもしれません。


よく比較されるのは、ケブ・モです。
確かに、「タジ・マハール・フォロワー」と呼ばれる音楽性には共通する部分もあるし、「黒っぽさ」の薄いことも似てる。
でも、受ける印象は全く違います。
ケブ・モが洗練されてるのに対して、僕にとって、エリック・ビブは「深い」。

告白すると、ケブ・モをいいと思ったこと、一度もないんですよね。
上質な、よくできた音楽だと思うけど、心に引っかからない。
ちなみに、ノラ・ジョーンズやハナレグミもそうです。
どれも本当にいい音楽だと思うけど、心から欲する音楽ではないんです。
うーん、説明が難しい。
たぶん、音楽的な話じゃないんですよね、これ。
同じ質感のミュージシャンを挙げるなら、ニーナ・シモンかな。
エリック・ビブの方が、ぜんぜん地味だけど。


曲も、地味です。
すごくシンプル。
例えば昔のブルース・マンやジャズ・マンが深く考えずに量産してただろう単純な曲たちにも、似てる。
でも、違う。
実は、ギターのリフや、単純だけど効果的なコード・チェンジまで、本当によく練り上げられている。
たぶん、「キャッチー」だとか「サビが弱い」みたいな考え方とは別のベクトルで、作曲してるんでしょう。
自分がインプットしてきた音楽から、身体から、心から湧いてきたものを、形にしている。
僕は、そんな印象を受けます。


個人的なお勧めは、『Good Stuff』(1997年)と『Just Like Love』(2000年)です。
『Good Stuff』は、エリック・ビブを第一線に押し上げた名盤。
ルーツ・ミュージック寄りのアコースティックな音作りで、オルガンやアコーディオンやコーラスの最小限のアレンジが素晴らしい。
ドラムが入る曲もあるけど、全くうるさくない。
どれか一枚、と言われたら、これでしょう。

"Good Stuff"

"Where The Green Grass Grows"


『Just Like Love』は、もっと地味です。
弾き語りに、ベースやチューバやアコーディオン、そしてカリンバ等が少し加わるのみ。
派手さのない分、心に沁みるんです。
曲がすごくいいですしね。





ライブ盤『Road Works』もいい。
基本的にベースとデュオの弾き語りで、何の色気も装飾もない。
これなんか本当に、「ブルース」というより「シンガー・ソングライター」色が出てる。
心が落ち着きます。
こういうのこそ、本当の意味で「癒し系」です。

他のミュージシャンとのコラボレーションも多くあります。
僕も全部聞いたわけではありませんが、アフリカ、マリ共和国のミュージシャンHabib Koite と組んだアルバムが素晴らしい。
カントリー・ブルースとアフリカの感じが、いい具合にブレンドされています。
いわゆる「ワールド・ミュージック」色は強くなく、僕のようなルーツ・ミュージック・ファンにアピールする内容となっています。

"On My Way To Bamako"

マリア・マルダー、ロリー・ブロックと作ったアルバムもあります。
期待通りの上出来なルーツ・ミュージックですが、エリック・ビブの個性が出てるとはあまり思えません。
聞いて損はしないでしょうけど、まあ別に買わなくていいかな、と。
こういうの追っかけてたら、キリがないですから。

最近では、豪華ゲスト参加で作られた『Blues People』の評価が高いようですが、僕はそんなにいいと思いません。
なんか、コンテンポラリー・ブルースにありがちなダサさがあるんですよね。
これも説明が難しい。
微妙にR&Bのテイストを混ぜて、ハードなドラムがやけに細かいハイハットを刻んでて、5弦ベース使っちゃう、みたいな雰囲気。
まあ好みなんでしょうけど、僕はそういうのが苦手なんです。


僕が好きなのは、エリック・ビブの誠実さ。
こんなにも色気を出さずに正直にいるシンガー・ソングライターは、なかなかいないと思います。
聞くたびに、心が洗われるようです。
スウェーデンという国にいるせいなのか。
かの国の音楽事情はわかりませんが、アメリカで活動していたとしたら、もしかしたらもっとマーケットを意識した音楽性になっていたんじゃないか。
なんて、想像します。
スウェーデン行ってみたいな。
カーディガンズ好きだし。

いつ聞いても、心が動かされる、奇跡のような、数少ないミュージシャンです。

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