『レッキング・クルー〜伝説のミュージシャンたち』



レッキング・クルー〜伝説のミュージシャンたち』を見てきました。
立川シネマシティの、「語るべき映画」という企画。
上映前にトークがあって、予備知識を得てから映画を見る、というものです。
いい企画だと思います。
トークも普通に面白いし。
今後もやるそうなので、オススメです。
ここは、極音上映や、ライブ形式の上映などもやっていて、面白い映画館ですね。
要チェックです。

映画、よかったです。
1960年代前後のロスのスタジオ・ミュージシャン達のドキュメンタリー。
主要メンバーのひとりであるギタリストのトミー・テデスコの、その息子が記録として撮り始めたものが、最終的に映画の形に発展したそうです。
父親への想いが動機だからか、とても誠実に作られています。
音楽の使い方や、タイトルなど文字の出し方、クレジットにいたるまで、愛に溢れている。
全体的に、何かを成し遂げてやろう、賞を狙ってやろう、というような作り手のエゴもなく、記録として資料を整理した、という印象を受けました。
それがとても好感が持てます。
何かの主張や問題定義はないですけどね。

以前に見た『黄金のメロディ〜マッスル・ショールズ』とは対照的だと思いました。
あれは、作者のエゴが全編を覆っている、美化しまくり砂糖かけまくりの、誠意の感じられない映画でした。
(見たときの僕の感想『残念だった映画「黄金のメロディ~マッスルショールズ」』)
最初のトークで、立川直樹はあの映画褒めてたけど、本当に音楽好きなのかなー。
ブラック・ミュージックの感動を正面から受け止めているとは、思えない。
ありがたがって洋楽を拝聴してる、前時代の人、って印象を受けてしまいました。

とにかくこの映画は、見ていて気持ち良かった。
ひとつ気になったのは、字幕。
だって、音楽やってれば誰でも分かる単語を、訳し間違えてるんだもん。
サックスやトランペットなど管楽器を、「ホーン」て言うじゃないですか。
音楽やってない人でも、「ホーン・セクション」て言葉は聞いた事あると思います。
なぜか、それを「ホルン」て訳してるんですよ。
数回出てきて全部「ホルン」だったので、ミスとは思えない。
「ホルン」として訳したんでしょう。
なんなんだろう。
音楽、知らない人なのかな?
他にも、確か「セッション」が「セクション」てなってた箇所もあった気がするし、まあ大した問題じゃないけど、でもやっぱりちゃんと訳した方がいいでしょ。


若者の新しい音楽としてロックのマーケットが確立していく中でスタジオ・ミュージシャンの需要がどんどん増えて、ビーチボーイズやモンキーズなど若いバンドは、自分たちでレコーディングせずにスタジオ・ミュージシャンを雇ってレコードを作るようになって、それこそ全米ヒット曲の多くを実際には彼らが手がけていて、寝る間もなく演奏してメチャクチャ稼いで。
それが、ビートルズあたりからはバンドが自分たちで演奏もするようになり、スタジオの仕事がなくなっていき、落ち目になってしまう。
まさに激動の人生です。

でも、その浮き沈みを特に強調したりせず、本人たちに語らせたものをそのまま編集してまとめて、バイアスなく見せてくれます。
だからすんなり見れる。
みんな面白い話を自然体で語っていて、音楽に詳しくなくても楽しめると思います。
そう、なんか、変わった人生を送ったおかしな老人たちの話を聞く、みたいな感じですかね。
誰でも耳にしたことあるだろう、それこそスーパーや商店街でかかってるくらいの有名曲がたくさん登場するし、飽きません。

僕は、正直ここら辺の音楽に詳しいわけではありません。
家に帰ってから周辺のものを聞き直してみても、いいと思うけど、やっぱり自分からすすんで聞くことはないですね。
演奏の中で、おお!と思う個所はあっても、全体としてはあんまりグルーヴィにも感じないし。
それでも、映画はすごく楽しめました。
マニアックな内容と思って気負わずに、気軽に見て大丈夫だと思います。


あらためて認識したんですが、レオン・ラッセルも、レッキング・クルーの一員だったんですね。
スタジオの仕事が減ったタイミングで、ソロ・アーティストになったという流れでしょうか。
最後のクレジットには、Drジョンやハロルド・バティステの名前もありました。
ちょうどこの頃、アールパーマーを頼ってニューオリンズからミュージシャンがロスにやってきてスタジオ仕事をやってたっていうやつかな。
AFOですね。
それも、レッキング・クルーなんだ。


それにしても、こんな時代があったんだなー。
金を稼ぎたいからミュージシャンになる、みたいな。
今ではあり得ない選択ですね。

この辺りの状況ってたぶん情報も少ないし、アメリカ音楽に興味ある人なら、見て損はないと思います。

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