2015年11月14日土曜日

ヴィム・ヴェンダース『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』

立川シネマシティで映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』を見てきました。

素晴らしかった!
あらためて、今まで見た音楽ドキュメンタリー映画の中で群を抜く最高傑作だと思いました。

何がすごいって、音楽と映像のマッチング。
まず、全てのシーンが美しい。
それも、決して自然に撮ってるわけじゃないんですよ。
かなり演出入ってます。
特に映画のほとんどを占めるキューバでの撮影は、全編に渡って色調がいじってあります。
あえて、ザラザラした画面で、明るくして飛び気味の映像にしてある。
で、これがキューバの景色の色合いとマッチして、とても美しい!
ライブ・シーンも、セピアぽい色合いにしてあって、これがまた効果的です。
ずっと見ていたい映像です。

カメラワークもいい。
鏡だかガラスだかに映った像から高速でカメラが移動すると、それは実はステージ上のミュージシャンの影だったり。
レコーディング風景では、デュエットしてる2人の周りをカメラがぐるーっと回ります。
インタビュー・シーンでは、カメラはとにかくアップで顔だけを映す。
どれもが、自然な、いわゆるドキュメンタリー・タッチではない演出です。
なのに本当に効果的で、そこで起こっている内容をより深く見せてくれる。
映画として考えても、とても見ごたえがあります。

ドキュメンタリーで演出が入ると、大抵は良くありません。
例えば、前に見たマッスル・ショールズの映画とか本当に酷かった
それが、演出することで逆にここまで内容が深まるなんて!
そもそも音楽ドキュメンタリーの場合、被写体で決まる部分も大きいわけです。
スコセッシの「ラスト・ワルツ」もいいけど、あれだってライブ自体が強力ですからね。
この映画だって、被写体はいいに決まってるんだから、普通に撮ってもいい映画になったはず。
でも、そうはしなかった。
そう考えると、この映画は圧倒的に素晴らしい。
ヴェンダース、すごいなー。
僕がドキュメンタリー撮ってもらうなら、ヴェンダースに頼みたい!


映画は、ライブ映像とインタビューを織り交ぜて進みます。
各ミュージシャンの語る中身も面白いんですが、それよりも表情や立ち振る舞いの映像から、より多くのことを伝えるような作り方をしています。
だから、インタビューは深く掘り下げたものではなくあっさりしてても、十分にその人の中身がわかる。
もちろん、老ミュージシャン達がそれだけの人生を送ってきたということが前提なんでしょうけれど。
誰もが素敵です。

ライブシーンもいい。
ただ全体を記録するのではなく、ミュージシャンのその場での感情を捉えようとしてカメラが動きまます。
そして、一曲通して見せることはせず、曲中にインタビューが挿入されていく。
こういうやり方、意外に少ない気がします。
あっても、映画ほぼ全編をそれで通すのはあまりないんじゃないかな。
そもそも、映像になった時点でライブの臨場感は失われるんだし、ライブでしか見れない、演奏の奥の感情とかって、こっちの方が伝わると思いました。
結果、どんどんライブに引き込まれていって、見ごたえがあります。

印象的なシーンがあります。
最後のカーネギーホールのライブで、客席から渡された国旗をみんなでステージに広げます。
キューバにとって、アメリカは決して手放しで好きになれる国ではないはずです。
特に映画の老ミュージシャン達の世代は、両国間の多くの確執を経験してきたわけで、色々な思いがあるでしょう。
あの瞬間、彼らはどんな気持ちだったんだろうか。


僕が音楽にハマったきっかけは、ライ・クーダーです。
なので余計にこの映画には感動してしまう。
ライは、音楽への愛と敬意に溢れたミュージシャンです。
キャリア初期から一貫して、世界中の素晴らしい音楽を求める旅を続けてきました。
ブルース、ジャズ、ハワイ、メキシコ、といった様々な音楽の偉人の所を訪れ、交流し学び、作品を作ってきた人です。
そのライにとって、ブエナ・ビスタのプロジェクトは、夢のようなものだったに違いありません。
自分が聞いて感動した音楽を奏でてきた尊敬するミュージシャンに囲まれて演奏できるなんて、そんなに幸せなことはないでしょう。
映画の中でライがキューバの老ミュージシャン達と交わす視線のやり取りや、ステージ上での笑顔から、僕はそんなことを想像してしまって胸が熱くなりました。

この映画、実は公開当時も映画館で見ています。
でも、そこまで記憶に強く刻まれてはいませんでした。
なんでなんだろう。
僕が変わったのかな?
わかりません。


家に帰って、アルバムを聞き直しました。
何度聞いても素晴らしい!
このコーラスとか、なんなんだろう。
普段そこら辺の音楽で耳にする、キチンと合った綺麗なコーラスとは全然違う。
合ってるとか合ってないとかいうレベルじゃない、もっとずっと奥深い音。
コーラスのそれぞれ1音づつに、ものすごい情報量が詰まってる。
それが合わさった時の感動。
コーラスが歌い始めた瞬間からもう腰が抜けてしまう。

やっぱり僕は、こういう音楽が好きだな。
音楽って本当に素晴らしい。
映画の中で、演奏してる顔が誰も幸せそうです。
いつかこんな風な境地にいけたらいいなーと、あらためて思いました。
そのためには、遊んでる時間はない。
音楽にも他のことにも、真摯に向き合わないと、深い楽しさは永遠にわからない。
真面目な人と、真面目に音楽をやりたい。


19日まで上映されています。
極上音響上映という企画で、本当に音がいいです。
映画館もいい感じで、すごくお勧めです。
立川まで行く価値ありますよ!

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