マウスピースの構造2 -

トム・リドナー氏の記事の翻訳の続編です。
前回の記事と合わせて、マウスピースの構造について分かりやすくまとまっています。


UNDERSTANDING THE MOUTHPIECE INTERIOR
by Tom Ridenour
(※翻訳後にHPが新しくなり、元記事がなくなってしまいました。責任者の了承は取ってありますので、約したものはそのまま残します。)




マウスピースの内部は、ボアとチェンバーの2つの部分から構成されます。
さらにチェンバーは、バッフルとサイド・ウォールとの2つの部分に分けられす。
それぞれの役割を理解するために、ひとつひとつ順番に見ていくことにしましょう。 


ボア

一般的なフレンチ・クラリネットのマウスピースの場合、ボアは円錐形で、バレル側に向けて内径が広がっていきます。
ボアサイズを比較する際は、通常、バレル側の端の一番広い部分を測ります。

マウスピースの設計上、最もピッチを左右するのがボア部分です。
楽器自体のピッチだけではなく、レジスターキイを挟んだ12度の音程にも大きく影響します。



ピッチへの影響

ラージ・ボアのマウスピースを使用すると、全体的にピッチが低めになり、スモール・ボアの場合は反対にピッチが高くなる傾向があります。
加えて、ラージ・ボアは高音域が高めになり、スロート・トーンが低めになります。
スモール・ボアの場合はこの反対です。



音色への影響

ボアの形状は音色や響き、吹奏感にも大きく左右します。
ラ-ジ・ボアの場合、柔軟性のある深く暖かい音色になり、スモール・ボアの場合は、はっきりした明るい音色になります。


チェンバー

音色と音質に大きな影響を与えるのがチェンバーです。
部分ごとに見てみましょう。


音色への影響:バッフル

音色を左右するのは、バッフルの形状とチェンバーの容積です。
バッフルには様々なタイプがあります。
基本的な傾向としては、バッフルがストレートで幅が狭いと、音色は明るくなります。
逆に凹んで幅の広いバッフルの場合、ダークな音色になります。


音質への影響: サイドウォール

チェンバーのサイドウォールは、音質に関わってきます。
サイドウォール間の幅が狭いと、芯のある密度の高い音になり、幅が広い場合は、柔軟で広がりのある音になります。
また、この両方の性質を取り入れて、サイドウォールを円錐形に設計した、Aフレームと呼ばれるタイプもあります。

いちばん最後に考慮するべき部分が、バッフルの幅です。
柔軟性を持たせたい場合には幅を広げ、音をフォーカスさせたい場合には幅を狭めます。

しかし、どれだけ音色や柔軟性が向上するしても、チェンバーの形状は、音量の問題からどうしても限界があります。
チェンバーとボアの設計によって音量を得ようとすると、チューニングが狂ってきてしまうのです。
これはクラリネットの楽器としての性質上の問題であり、マウスピースの設計にはどうしても限界があるのです。



ボアとチェンバーの組み合わせ

クラリネットの音程と音色は、ボアとチェンバーの組み合わせによって決定されます。
ラージボアと、深くくぼんだチェンバーとの組み合わせからは、深みのある響きが得られます。
これは多くのプレイヤーにとって魅力的ですが、同時に楽器全体の音程が低くなることにも繋がります。

音程の問題は、短いバレル(65mm程度)を使うことで解決される場合もあります。
また、逆テーパード型のMoennigバレルも有効ですが、それでも音程を高くすることは簡単ではありません。

スモール・ボアと平坦なバッフルを組み合わせ、サイドウォールを広めに取ることで音に深みを出す方が、通常は良い結果を得られます。
この場合、ピッチは高めになり、67~68mmのバレルが必要になることもあります。

Moennigのような逆テーパード・バレルは、このタイプのマウスピースには合いません。
ボアが小さいほど、バレルの内径はストレート型が適しています。


以上が、ボアとチェンバーに関する基礎知識です。
これらを知っておくことで、目的に合うマウスピースを的確に選ぶことができるようになるでしょう。 


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