N.O.生活11 - ハリケーン後の音楽シーン

New Orleans Moonshiners としての活動が始まりました。
まずは、どんな音楽シーンにいたのかを書いておきます。


ハリケーン後、ニューオリンズの音楽シーンは変わりました。
と言っても、僕はハリケーン以前のことについては旅行者としてしか知りません。
それでも、ミュージシャンの種類は明らかに変わっていたし、それは僕がいた4年間に耳にした様々な話からも確かです。

トラディショナル・ジャズのシーンでは、ハリケーンを境に、それまでいたミュージシャンが去り、若いミュージシャンが大量に移り住んできました。
ハリケーンの被害は大きく、町の生活は厳しくなり、ミュージシャンの仕事も減ってしまった。
家を失ったミュージシャンもいて、そこから生活を立て直すのは簡単ではありません。
他の州に避難し、そのまま戻って来ないケースも多かったようです。
しかし、若ければ、なんとかなります。
家族もいないし、数人でルームシェアをすれば生活費も安く済みますからね。

ニューオリンズの、古き良きロマンチックなイメージに惹かれ、ヒッピー感覚でやってきて、路上演奏でなんとかやってる若いミュージシャンが沢山いました。
そして、ミュージシャンだけではなく、ダンサーも移り住んできていました。
スウィング・ダンスと呼ばれる、1920〜30年代に流行ったダンスの愛好者たちで、そこでかかる音楽はもちろん古いジャズです。
彼らは夜な夜なバーに繰り出し、若いミュージシャン達の演奏に合わせて踊ります。
ミュージシャンとダンサーはみんな仲が良く、ひとつのコミュニティが形成されていました。 
このコミュニティは、おそらくハリケーン以前にはなかったものだと思います。

バンドが演奏するのはスウィング・ジャズ。
ディキシー・ランド・ジャズの源流のような音楽で、速いテンポで熱狂的に演奏されるのでホット・ジャズとも呼ばれます。
スウィング・ダンス自体、上級者になるとアクロバティックな動きもあるような激しい面もあり、ステップも速いですからね。
それは、伝統的なニューオリンズ・ジャズとはある意味で対極の音楽です。
実際、昔からいたミュージシャン達との交流はほとんどありません。
外部から移植されたような、独特のコミュニティでした。

僕らのバンド New Orleans Moonshiners は、その新しいコミュニティの中で活動を広げていきました。
各地域のローカル・バーや、スウィング・ダンサーの集まるイベントで、結成当初から週イチは演奏していたと思います。
ダンサーを中心とするそのコミュニティは、ミュージシャンをサポートしようという意識が強く、皆オープンでフレンドリー。
世代も近く話も会うので、居心地は良かったですね。

僕はニューオリンズの音楽が好きで渡米したのですが、思いもよらぬ新しい場所から音楽活動が始まりました。

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