N.O.生活27 - アメリカか日本か
1月、最終学期がはじまりました。
卒業まであと4か月。
進路について考えなくてはいけません。
アメリカに残るのか、日本に帰国するのか。
アメリカに残る場合、ビザが必要です。
ミュージシャンの場合、アーチスト・ビザです。
取れないことはない、けど、お金がかかります。
取得の時はもちろん、毎年か数年ごとの更新の際にも安くないお金がかかる。
たしか日本での手続きも必要で、飛行機代も合わせると数十万単位の出費はさけられない。
これは、楽じゃない。
これは、楽じゃない。
アメリカでも、クラリネットだけで生計が立つのは、おそらくニューオリンズだけです。
他の町では、日本と同じように、各種サックスや場合によってフルートも演奏しないと、満足に稼げない。
僕は、サックスもやらないどころか、使っているクラリネットも普通じゃない。
ニューオリンズ以外ではやっていけないでしょう。
もし将来、ニューオリンズで仕事がなくなり食えなくなったら、どうすればいいか。
日本なら、バイトでもなんでも、どうにかなります。
しかし、不景気でアメリカ人でも仕事に困っているのに、音楽しかやってこなかった外国人に選択肢があるのか。
かなり厳しいはずです。
そもそも、ニューオリンズは海より低い位置にある町です。
温暖化で、遠からず水の底に沈んでしまうという説もあります。
ハリケーンもきます。
そんな時、身を寄せる場所が、僕にはありません。
なにかあったとき、だいたいの人は実家ある日本に帰国します。
でも僕の場合、実家には世話になってはいないので、気軽に戻ることは考えづらい。
でも僕の場合、実家には世話になってはいないので、気軽に戻ることは考えづらい。
19歳で家を出て以来、1人でやってきて、留学中に帰国するときにも、実家に泊まることはなかったし、荷物を預けもしていない。
仲が悪いとかじゃないんですけどね。
と、けっして楽観できない要素が盛りだくさんです。
そこまでして、アメリカに残りたいのか。
たしかに、僕の性格上、日本よりは楽しく暮らせるでしょう。
でも、肝心の音楽面では、はたしてどうか。
ニューオリンズでは、何も考えず毎日演奏して暮らせる。
それはもちろん楽しいに決まってます。
僕が、楽しければいい!というタイプの人間なら、なんの問題もないんですが、そうはいかない。
アメリカに来たのだって、ただ楽しそうだから、というのじゃなくて、ニューオリンズの音楽が好きで好きでたまらなかったからです。
それなのに、渡米のモチベーションとなった、僕の好きなニューオリンズ音楽は、もはや現地にも存在しません。
まだ活動している伝統を背負ったベテランミュージシャンも、そのうちいなくなってしまう。
僕が愛する音楽は、アメリカでも、過去のものになろうとしています。
ライブは、楽しい。
ライブは、楽しい。
でも、新しい音楽シーンの若いミュージシャンたちや、カーミット・ラフィンを筆頭にした中堅ミュージシャンたちは、過去の伝統に興味がない。
アメリカに残るということは、ニューオリンズでクラリネットを吹くということ。
しかしそれは、僕をここまで導いてくれた音楽を捨て、むしろ、それを食い物として生きていかなくてはならない。
それで自分が幸せになれるとは、思えない。
ということを考えていると、ライブで演奏していても、素直に楽しめません。
周りのミュージシャンとの考え方のギャップが、ストレスになってきました。
アメリカまで来て、やりたい音楽がやれてないなんて、本末転倒じゃないか。
こんなことやってて、マイケルやトム、トロントのみんな、そして過去の素晴らしいミュージシャンたちに、合わせる顔がない、という気持ちがふくらんでいきます。
それで、帰国することに決めました。
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