2017年7月14日金曜日

ボブ・ホスキンスに会いたくて『モナリザ』を観る

どんな映画が好きか聞かれると、ミニシアター系、フランス・ヨーロッパ映画、なんて答えます。
好きなジャンルっていうと困る。
ギャングものは好きだけど、もそもそも数も多くないし。
アクションやホラーは見ないかな。
まあ、あまり内容で選ぶことはしません。

それでもひとつだけ、とっても弱いジャンルというかお話があります。
それは、男の哀愁もの。
イメージでいうと、クリント・イーストウッドかなー。
でもちょっと男っぽすぎる。
ショーン・ペンの方がいいな。
あと若い頃のキース・キャラダイン。
不器用で孤独な男の、報われない恋の話なんかが、たまりません。
一歩間違えばストーカー、秘めた純愛なのか妄想なのか、みたいな。

典型的な作品は、パトリス・ルコントの『仕立て屋の恋』。
モテない孤独な中年男がミステリアスな美女に惚れてだまされて、それでも愛だと信じて自分を犠牲にする話。
こうやって要約しちゃうと、すごく安っぽく聞こえちゃうな。
でもとにかくそういうのに弱いんです。
ルコントでは、『タンデム』も男の哀愁がプンプンして、いいですね。
作品としては『タンゴ』がいちばん好きだけど。


そんな男の哀愁映画の中でもお気に入りの一本が、『モナリザ』です。
『クライング・ゲーム』『インタビュー・ウィズ・バンパイヤ』で有名なニール・ジョーダン監督が、ハリウッドに進出する前に撮った佳作。
この頃の作品は、地味でいい。

冴えない中年チンピラの報われない恋の話。
7年のムショ暮らしで時代の流れから取り残され、なんとかボスにあてがわれたのは、高級黒人娼婦シモーヌの運転手。
イヤイヤ送り迎えにするうちに惹かれていくけれど、彼女には過去があり、見てる世界が違っていた。
「出会ったときから、彼女はワナにかかっていた。惚れていた男は気づかなかった。そこにはたしかに愛があった。しかし、彼女が愛していたのは、彼ではなかった。」
そんな話。

とにかく!
主演のボブ・ホスキンスが素晴らしい!
ハゲ頭にチビでずんぐりとした体型が、もう哀愁を誘います。
単細胞キャラ。
よく言えばピュア、悪く言えばバカ。
こんなに純粋で不器用な姿を見せられたら、涙せずにはいられない。
画面の外に去って行くシモーヌを見つめるときの、視線。
嫌っていた相手にしだいに惹かれていく心理を、余計な説明なしに、表情や仕草だけで見せてくれる。
過剰な部分の一切ない、名演。
彼を見るだけでも、この映画は価値がある。
好きな演技ベスト3に入ります。
ちなみにあとの2つは、『蜘蛛女のキス』のウイリアム・ハートと、『レイジング・ブル』のデ・ニーロです。
  
でもまたね、他の役者もみんないいんですよ。
ミステリアスな娼婦役のキャシー・タイソンがハマってる。
この作品でデビューしてかなり話題をさらったそうですが、その後はテレビでの活躍が多く、観る機会がなく残念です。
そして、ボブ・ホスキンスの子分というか親友役の、ロビー・コルトレーン。
イギリス労働者階級の素朴さ。
ふたりの関係が、これまた素敵です。
落ちぶれた兄貴分を、あたたかく受け入れる。
彼がボブ・ホスキンスに言う「あんたは俺のヒーローだったのに」っていうセリフに、グッときます。

そして、組織のボスを演じるマイケル・ケインが相変わらずいい仕事をしている。
そもそも僕は、マイケル・ケインのファンだからこの映画を観たんですよね。
今でこそ演技派としてメジャー映画にも出てるけど、僕が『ハンナとその姉妹』で彼を知った20年くらい前は、日本ではまだ知名度が低く、見れる作品があまりなかった。
『殺しのドレス』『デス・トラップ』『アルフィー』『ペテン師とサギ師』くらいでしょうか。
この映画でも、出番は少ないけど、さすがの演技です。

悲劇的なクライマックスのあと、終わり方があっさりしているのも、いい。
それが、エンドロールに流れるナット・キング・コールの「モナリザ」を引き立てます。
"モナリザよ、その微笑みは誘惑なのか、それともたくさんの夢に破れ傷ついた心を隠してるのか。"
という歌詞が、映画をしめくくる。
歌から作られた映画なんじゃないか、ってくらいに合ってる。
もう、どこかでこの曲を耳にするたびに、ボブ・ホスキンスの姿を思い出してせつなくなります。


人物を見せる映画が好きなんです。
凝ったストーリーなんて、一度見ればそれでおしまい。
でも、人間はそうじゃない。
何回でも、その人に会いたい、っていう気持ちにさせてくれるんです。
これからも、ボブ・ホスキンスに会いたくなって、この映画を見ることでしょう。

ちなみにこの映画、元ビートルズのジョージ・ハリソン主催の「ハンドメイド・フィルム」製作です。
それもなんとなく嬉しいです。

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