2017年7月25日火曜日

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』を観ました。

心に傷を抱えた男の話。
設定やストーリーに特別なものはない。
いかにも「いい映画」になりそうなお話の、語り口が、素晴らしいんです。

なんといっても、役者がみんないい。
リアリティのある演技。
そういう、演出なんでしょう。
主演のケイシー・アフレックが、いい。
ベン・アフレックの弟だそうですが、あまり知られていなくて、この映画でアカデミー賞を取って一躍注目されたそうです。
はじめて見て、大好きになりました。
こんな繊細でいい役者が、まだまだたくさんいるんですよね、きっと欧米には。
こないだ書いた『モナリザ』のボブ・ホスキンスくらいに、忘れられない演技です。

演出も地味だけどすごい。
驚いたのが、カット割り。
たとえば、町や空や、色んな風景をつないでいくシーンて、あるじゃないですか。
そのつなぎ方が、すごい。
いままでカット割りですごいな、って思った映画はたとえばベルトリッチの『シャンドライの恋』だけど、あれは誰が見てもすごいって思うものだけど、この映画はそうじゃない。
一見、普通なんだけど、こんなに何気ないようでいてこんなに心に訴えてくるカットのつなぎ方は、初めてです。
ここまで全てのカットが情感を持っている映画って、ちょっと思いつきません。
って、これ、文章で書いても何も伝わらないですよね。
書きたくて。


はっきり言って、何も起こらない映画です。
だから、ストーリーを説明しても意味がない。
説明したいとも思わない。
僕の心に触れたのは、登場人物の描かれ方や、ケイシー・アフレックの演技です。
でもそれって、説明なんてできない。
傷ついたり傷つけたり誰かを思って悩んだことのある人なら、あるいはそういう人が身近にいたなら、この映画が好きになるでしょう。
あまり悩まず考えない、他人に興味のないタイプの人にとっては、面白くないかもしれません。
主人公をはじめとした登場人物に会い、彼らを知り、深い感情に触れる映画です。


僕はこういう、人物が描かれてる作品が、きっと好きなんですよ。
ドキドキハラハラとか、泣ける笑えるとか、そういうストレス発散みたいなことは、映画にひとつも求めてない。
ていうか、そもそもストレス発散や気分転換をしたいと思うことがないし。
感情に触れること。
それは実際に誰かと会って話すことにも似てるんだけど、映画はもっと普遍的な体験です。
だから心に残って、ある時ふと、ある映画のある場面を思い出す。
この映画のケイシー・アフレックのことも、これから何度も思い出すでしょう。
そして、またこの映画を観るでしょう。
そのくらい、大好きな作品です。
スクリーンで観れてよかった。

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