2017年5月9日火曜日

『アーティスト』!!

『アーティスト』を見ました。

素晴らしかった!
内容からして、間違いなく好きだろうと予想はしていたけど、まさかここまで素晴らしいとは。

2012年に米アカデミー作品賞を取った、フランス製作の白黒サイレント映画です。
舞台は、映画がトーキーに移行していく時代のハリウッド。
落ちぶれていくサイレント映画のスターと、トーキーの新進女優のお話。
はっきり言って、ベタなストーリーです。
でも、その王道・定番さが、いい。
ツボを押さえたストーリーの上で、映像で魅せる映画です。

セリフがないことが、効果的です。
例えば、ケガをした主人公のベッド脇から、ヒロインが話しかけるシーン。
おそらく自分の毎日の出来事を、夢中で話して聞かせている。
話の内容がわからないぶん、イキイキと楽しそうな表情に目がいきます。
続いて、聞いている主人公の表情が映されると、とっても優しい顔をしてる。
幸せな気持ちが、伝わってきます。
このシーンにセリフがあったら、会話の内容に意識がいってしまう。
でも、言葉の情報がないおかげで、そこで二人がどんな気持ちでいるか、っていうことだけが、見えてくる。
実際に、好きな人と話すときって、内容は重要でなかったりしますからね。

そんな素敵な場面がたくさんあります。
ふたりが初めて映画で共演する、パーティのシーン。
主人公がダンスのパートナーを変えていって、彼女と踊る番になると、笑ってしまって何度もNGを出してしまう。
どんな会話をしてるのかわからないけど、音楽が流れて二人の姿があるだけで、距離が縮まっていく様子が手に取るように感じられて、涙が出そうになりました。
もしセリフがあったら、ここまで胸に迫ることはなかったと思います。

圧倒されたのは、ラスト近く、銃を持った主人公をヒロインが止めに入るシーン。
それまで流れていた音楽が突然なくなって、無音になり、必死で説得する彼女主人公のやりとりが、ずっと無音の中で映される。
セリフが、そして音がないということが、こんなに胸にせまるなんて。
このシーンの間、僕は息もできないくらいの感動にのまれていました。
ある場面、ある箇所、というのではなくて、シーンの間ずっと心が揺さぶられ続けるなんて、はじめての経験です。
サイレントの力強さに、打ちのめされました。


中盤からは、もうトーキーの時代になっていますが、映画自体はサイレントのまま進んでいきます。
いよいよ音が付くのは、ラストのダンスシーン。
まずはステップの足音が聞こえてきて、ハッとします。
そして、最初に発せられる「声」は、躍動感あふれるダンスの最後、画面に向かってポーズを決めた2人の、なんと、息切れの音!
こういう、言葉では説明できない感動こそが、映画の醍醐味です。
しかも、このシーン自体が、サイレントからミュージカルへと続く古典映画へのリスペクトになっているのだから、打ちのめされます。

このシーンに限らず映画全体に散りばめられた過去の作品へのオマージュについては、賛否あるようですが、僕は好きです。
ただ引用してるのではなく、敬意が感じられて、その愛情が見る側にも伝わるから。

そして、単なるハッピーエンドではない、懐古趣味なんかではない、心に残る終わりかた。
感動に力がぬけて、疲れ果てたような心地よさが襲ってきました。
こんな風にして、疲れるほどに心が動かされる映画は、そうはありません。
他に思いあたるのは、『アンダーグラウンド』『ペーパームーン』『蜘蛛女のキス』くらいかな。

白黒・サイレントの力強さ。
隅々まで情感にあふれた、素晴らしい作品です。
見てよかった。


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