『カメ止め』 がJackson5をパクってて驚いた

『カメラを止めるな』を見ました。ようやく、ネットで。
話題の時に見に行かなかったのは、そもそもスプラッター系みたいなやつ苦手なんですよ。だからゾンビ映画も1本も見たことないし。
それに、周りの信用できる人たちからの評判が良くなかったんで、なんとなく、「お話は面白いけど映画としてはイマイチな自主制作もの」だろうと思って、だったら劇場でわざわざ見なくていいかなーどうしようかなーと思い、今に至った次第です。

結論としては、ほぼ、その通りでした。
はっきり言って、面白い!
でも、なんていうか、それは映画的な面白さではなくって、単純に脚本・アイディアが秀逸ってだけなんですよね。

だから、お話が終わったあとの最後のシーンは三文テレビドラマみたいで冷めてしまいました。とってつけたように親子の写真を出してきたり、各人物の笑顔を映したり、すべてがテンプレ的演出なんだもん。映画のテンプレじゃなくって、「ポスターには赤ちゃんと動物使っときゃ間違いないっしょ!」みたいな感じのやつ。
それも含めて、よくこの映画の宣伝文句で耳にした「映画愛」は感じられませんでした。
この作品に映画への愛があるとしたら、過去のいわゆる「名画」はその愛の対象には含まれていない。たぶん僕の周りで否定的だった人たちも、そこが引っかかったんじゃないだろうか。
まあ最後ガッカリしたけど、僕は期待せずに見たので、それは別にいいんです。全体として面白かったことには変わりない。


でも、衝撃はさらにその後にやってきたんです。
エンドロールで音楽が流れ出した瞬間、思わず飛び上がりました。いやほんとに。
だってその曲が、Jackson5の「I Want You Back」のパクリなんですよ!
はい、これ僕はパクリと断言します。あらためて「I Want You Back」と交互に聴いてみたらテンポまで一緒で、これ絶対に下敷きにしてるとしか考えられない。きのう見てから今まで熟考したけど、パクリ確定です。

ググると、オマージュだって意見の阿呆もいるけどね、これはパクリ。
オマージュって、まず対象作品へのリスペクトが必須なんですよ。
何かを好きになった人なら、
「俺この○○すげー好きなんだよ!」「え?マジ?俺も大好きなんだよ!」
っていう時の最高にハッピーな気持ち、わかるでしょ?そこから恋が生まれることだってあるくらいに、それくらいにそれは神聖で幸せな出会いなんですよ。
その出会いが、作品を通じて不特定多数との間に起こる、なんかもう宗教的儀式にも似たものが、オマージュです。

もっと具体的に言えば、オマージュって、元ネタはあくまでも一部のみ使うものです。ワンフレーズだけとか。借用・挿入みたいな感じですかね。
たとえば、ギターのバッキングのフレーズの最後にチラっと借用するとか、歌詞の一部にワンフレーズだけ借用するとか。で、それはもちろん曲全体のコンセプトに不可欠のものじゃないといけない。
よく、たまたま似ちゃう、とか言うけど、僕も音楽ずっとやっきて、たまたま似ちゃうってね、実はそんなにないですよ。似ちゃうのはその人が元ネタを浴びるほど聴いてきたからで、それはその人の演奏を聴けば、ほぼわかります。
映画だって同じです。たとえば登場人物の着てるTシャツに名前が書いてある、とかそのくらいですよ、オマージュって。

で、なんなんだこれは!って思ってググると、監督のインタビューが出てきました。
質問者に「I Want You Back」に似てますね?って聞かれて、「よくわかりましたね(笑)」って答えてるんですよ!
えええ!この曲が超超超有名曲だって知らないの???このイントロ始まった瞬間、誰でもわかるよ!!!マイガールのイントロくらい有名だよ!!欧米なら、笑点のテーマくらい有名なんだよ!??誇張じゃないよ!だってアメリカのスーパー行けばBGMで毎日流れてるから!
しかも、作曲担当に「こんなに似せていいんですか?」って何度も確認されました、って笑って答えてる。
いやいや!オマエ軽すぎだろ!もっと対象曲のこと調べなさいよ!これってジャクソンファミリーでモータウンでそこにはブラックミュージックの歴史や公民権運動とか奴隷制度とかあって、たくさんのアーチストが大事に演奏し続けて受け継がれて、いろんな意味がこれまでの年月で付与されてきた曲なんだよ!そして、そんなのググれば5分でわかるよ!
ていうか、作曲した奴もさ、過去の名曲に対するリスペクトとかないのかよ!音楽家としてのプライドとかないのかよ!

ああ、興奮してしまった。

まあ、カッコいいって思ったからそれと似たものを作る。それは素朴に誰でもやることです。
上田監督は、そこでその対象について調べたり研究したり工夫したりしないのかな。そういえば脚本パクリ問題でもかなり揉めてたっぽいし、パクリ癖のある人なんだろうな。
って、「I Want You Back」の件があるからパクパク書いてるけど、本人は悪気なさそうなんですよね。
きっと、軽い人なんでしょう。
だって、「100年後に観てもおもしろい映画」をスローガンにしてるそうなんですが、そんな恐れ多いこと言える映画監督、世界にもそうはいませんよ。
そもそも映画ってまだ100年ちょっとの芸術なんだから、それってチャップリンやヒッチコックやスピルバーグやクロサワやあるいはゴダールやフェリー二やそういった人たちと並ぶあるいは超えてみせる!というようなものすごい発言なわけです。
最低限、そうした偉人達と同等の研鑽を積むとか、これまでの100年に作られた映画を全部見て研究するとか、そのくらいの映画愛がないと言えないよそんなの普通。
ロックで言えば、ビートルズの曲だってまだ50年くらいしか経ってないしね。


上田監督、『カメ止め』は面白かったし才能あるんだと思うけど、次作も評判良くないし、このまま映画やっても続かないんじゃないだろうか。
映画って、いくら機材が手軽になったとはいえ、軽い芸術じゃないし、その「重さ」こそが映画をスペシャルなものにしてるんだと思う派の僕からすれば、上田監督はネットやテレビの方が、合ってるんじゃないかな。スパンも早いし、アイディアと持ち前の才能とセンスだけで、身軽に、誰も思いつかないような新鮮な作品をどんどん作って歴史を更新していけるんじゃないだろうか。
変な意味でじゃなくって、正直に、そう思いました。


そして、I Want You Back はやっぱり名曲。ため息と涙が一緒に出るくらいに。



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