旧友に会った

十数年ぶりに、旧友と会いました。
冨永昌敬。
映画監督です。
コンスタントに作品が公開されているので、ああやってるな、という感じで名前は目にしてたけど、特に用事もなくきっかけもなく、連絡をとることはありませんでした。
それが、ひょんなことで突然また繋がったんです。
ビックリして嬉しくて、飲まずにはいられませんでした。

ハタチごろからの数年間、僕が音楽からはなれていた時期に、一緒だった友達です。
当時はとにかく映画が好きで、映画を見まくって、映画業界の人と一緒に自分でもカメラを回していました。
といっても、映画を撮るんじゃなくて、パフォーマンスや舞台を撮影してたんですけどね。
学校を辞めて実家を出て、何の経験もないままに知らない世界に飛び込んで、とんがった若者やうさんくさいおじさんたちが周りにたくさんいて、変な場所に出入りして、いま思い返してみても、すごく濃密な数年間でした。

冨永は日大の映画学生でした。
映画や、音楽について、たくさん語り合いました。
ミンガスの話。自伝がヤバイこと。
ベルトリッチの話。「暗殺の森」のこと。
ライ・クーダーの話もして、僕はそんな頃からニューオリンズに行きたい、って言ってたらしい。
冨永が教えてくれた今村昌平の映画、いまだに見てないんだよなー。

ふたりとも、若くて斜に構えていた。
くだらないことも含めて、むやみに熱くなってて、大学にいっていない僕にとっては、あのころが青春だったんですよね。
同世代との付き合いが少なかったので、同い年の冨永は、数少ない青春時代の友達です。

そんなだから、会えて嬉しくて。
これだけ時間があいていても、やっぱり昔のようで、話がつきない。
僕は古い出来事をぜんぜん覚えてないので、冨永から聞く若いころの自分の姿が新鮮です。
そして、話してるうちにいろんなことを思い出してきます。
プランBに山谷のドキュメンタリーを見に行ったこと。
梅津和時を聴きにジャンジャンに行ったこと。
ドリーム・コーヒーって喫茶店のこと。
おもしろいこと、いっぱいやってたんだな。

ああ楽しい。
いまの俺たちもおもしろいなー。
こいつ、変わってないなー。
いや、きっと変わってる部分もたくさんあるんだろうけど、変わってないように思えてしかたない。
それはきっと、僕は冨永の奥のほうの、根っこの、核みたいな部分が好きだから。
昔だって、学校やなにか同じ団体にふたりが所属してたわけじゃない。
一緒になにかを作ったり作業をしていたのでもない。
用事もなく、会いたいから会ってたわけだから。
そういう関係は、貴重なものです。

あらためて考えてみると、あの頃まわりにいた人たちで、いまも何かを続けてるのは、ごく少数です。
みんなやめていった。
どこかへいってしまった。
冨永と再会できたのは、ふたりとも続けていたからです。

こんなに嬉しい出来事は、そうはない。
会えてよかった。
続けていてよかった。



コメント