2017年9月1日金曜日

泥水っておそろしい

一昨日の晩のこと。
渋谷まで飲みに行って、自転車をガードレールにロックでくくりつけたら、キイが手からすべって、側溝って言うんですかね?道路の脇の鉄格子の穴に、ポチャンと落ちてしまいました。
ちょっと探ってみても見つからなくっていたら、交番に行けば底をさらう道具貸してくれるんじゃない?って言われて、ハチ公前の交番に行くと、酔っ払いやら数人の対応で、かなり忙しそうです。
カギが側溝に落ちて・・・と説明すると、あーそりゃダメだ、と、まったく相手にしてもらえません。
ほぼ無視に近い。
やさしくしてよお巡りさん。

仕方ないから、とぼとぼ現場に戻って、ちょっと迷ったけど、鉄格子のフタを外して穴を手でさらいました。
底まで手が届く深さだし、穴も大きくないから、わりと楽に見つかるんじゃないか。
ちょっとの辛抱!
と思ったんですが、甘かった。
穴の底には、泥だかなんだか柔らかいものが溜まっていて、それが浮かんできて水の中でぐるぐる回ってしまう。
石やプラスチックの物体やらいろんなものが落ちて積み重なってゴチャゴチャで、その中からカギを探し当てるのは、どうやら簡単じゃない。
顔を近づけてるから、けっこう臭い。
きっとこの水はすごく汚いんだろうな。
昼間でよく見えてたら、気持ちが折れてたかもしれないな。
しばらくがんばったけど、姿勢もつらいし、あきらめました。

手を洗いに、すぐそばのセルリアンホテルのトイレに行きました。
上質な石鹸。
お湯も出ます。
ヒジのあたりまでよく洗って、やわらかく上質なペーパータオルで吹いて、サッパリ。
さて、どうしよう。
ロックが外せないから、自転車は置いて帰るしかない。
スペアのキイは、ない。
製造元に言えば、スペアを送ってくれるはずだけど、どのくらいかかるんだろうか。
渋谷はすぐに撤去されてしまうから、間に合うかな。
あるいは、もうあきらめて、撤去されたのを取りにいく方が早いかな。
渋谷区の撤去料は2000円だから、高くはないし。
カギは買い直さないといけないけど。

と考えながら駅に向かってると、なんだか臭う。
まさか。
自分の右手をかいでみると、うっすらドブ臭い。
ちゃんと上質な石けんで洗って上質な紙で拭き取ったから汚れてはいないはずだ、と思ってみても、どうにも気になる。
なんだか肌の表面に泥がこびりついて固まって、手が重いような感じさえしてきます。
そんなわけないのに。
いちど気になると、匂いがはなれてくれない。

やっと帰宅してシャワーを浴びて、あースッキリした!と思ったら、あれ?おかしいな。
なんと、まだ少しだけ匂います。
ウソでしょ?
これ、いつまで残るんだろう?
利き手だから、顔に近けることも多くて、その度に気になってしまう。
まいったな。


でも考えてみると、世の中には、泥水に関わる仕事をする人も、きっといるんじゃないか。
素手をドブに突っ込むことはしなくても、長時間なにか作業していたら、体に匂いがつくんじゃないだろうか。
シャワーでも落ちないんだから、いつも匂いの中で過ごさなくちゃいけない。
そのうち、慣れるんだろうか。
自分は慣れても、家族や友達は、どうだろう。
なかなか彼女もできづらいんじゃないか。
町ゆく人から、なんか臭わない?なんて言う声が聞こえたりするかもしれない。
僕も昔カレー屋でバイトしてたとき横断歩道で、カレーの匂いしない?って前の人たちが話してたことがあった。
ずっと昔は、革なめしや屠殺とかたぶん匂いがある仕事は、下層の人々に押しつけられてた、みたいな話も、教科書に載ってた気がします。

いま実際に、そういう様な仕事がどれだけあるのか、わかりません。
仕事じゃなくても、世界にはいわゆるスラム街もあるし、清潔とは言い難い環境で暮らす人もいるわけです。
たしかウイリアム・バロウズだったか、ヤク中で一年間風呂も入らず同じ部屋にいた、っていう話をどこかで読んだこともあります。
そういう生活を想像したとき、嫌だな、と不快感が先にきてしまう。
カギを落として、さらにそんなことを考えていると、自分は何者なんだ、と思います。
けっきょく、限られた場所からしか見れてない。
あの側溝の穴の中には、僕の人生なんか及ばないような、雑多で複雑な世界が、おそろしく奥深く折り重なっているような気がします。

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