N.O.生活22 - Moonshiners 解散

なんと前回から5ヶ月も空いてしまいました。
このペースでは、終わらない!
駆け足で進めることにします。
今回は、バンドの顛末を。

ゴードンがニューヨークへ去ったあとも、Moonshiners は順調でした。
小さな店だけではなく、DBAなど大きめのクラブや老舗ジャズ・クラブのスナッグ・ハーバーにも出るようになり、プライベート・パーティなどの演奏も増えました。
ジャズ&ヘイテイジ・フェスティバルやフレンチ・クォーター・フェスティバルへも出演し、ニューヨークにも呼ばれてリンカーン・センターで演奏しました。

そんなある日、事件が起こりました。
バンドのミーティングというので集まって、みんなで雑談していたときのこと。
リーダーのクリスが、大事な話がある、と言います。
Moonshiners を法人化し、今後は仕事に応じてその都度ミュージシャンを雇うことにする。
みんなを雇うこともあるかもしれないが、保証はできない。
いま持ってるレギュラーの仕事は自分が全て引き継ぐ。
アルバムの売り上げも今後は会社に入る。
と、言うのです。 
なんと、全員クビですよ!

クリスは、しばらく前から準備を進めていたようです。
すでにバンドは法人登録されていました。
メンバー全員に、バンドに関する権利を放棄し今後Moonshinersの名前を使わない、というような書類が用意されていて、手切れ金のようなものを提示されました。

そんなことって、あるのか。
Moonshinersは、クリスとトロンボーンのチャーリーが二人ではじめたバンドです。
それからみんなで一緒にやって、大きくしてきました。
それを、軌道に乗ってきたとたんに裏切るなんて。
僕は学生だけど、他のメンバーは生活にも関わります。
毎月そこそこの収入があったものが、突然なくなるわけですから、大ごとです。

もちろんみんな怒りました。
しかし、全ては手配済み。
クリスは弁護士も立てていて、次の大きなライブにはすでに町のベテラン・ミュージシャンが呼ばれていました。
ベテランを雇うことで、他の若いトラディショナル・バンドと差別化して、より大きな仕事を取りたい、という考えのようです。

揉めましたよ。
でもけっきょく、クリスのやり方が通りました。
そんなことがあったあとで、とても一緒にやれないし。
みんな手切れ金をもらって、実質バンドは解散です。
Moonshinersの名前は残るけど、中身は別物ですからね。


こんなこと、まさかニューオリンズで起こるなんて。
ニューオリンズの魅力は、人です。
みんな助け合って生きてる、あったかい町。
あれだけふくよかな音楽が生まれるのも、人のあたたかさがあるからです。
仲間の裏をかくなんてあり得ない。
ショックでした。
クリスとも、いい思い出はたくさんあったのに。

ニュースはすぐに広がり、Moonshinersはそれまでいた音楽シーンから消えていきました。
フェスティバルには出ていたし、プライベート・パーティやホテルでの演奏などは、まだあったのかもしれません。
が、町のミュージシャン同士のつながりからは、クリスはもう外れてしましました。
そりゃそうですよ。
わかってたはずなのに、なんであんなことしたんだろう。


アメリカの友達の近況は、いまでもFacebookなどで知ることができます。
Moonshinersの仲間も、みんなそれぞれ順調に音楽活動を続けている。
でも、クリスの噂は聞きません。
クリスもFacebookに登録はしてるけど、ミュージシャン仲間とはほとんど繋がっていなくて、投稿もしてません。
MoonshinersのHPも数年前から更新されていない。
その後、彼がどうしてるのか、分かりません。

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