音楽は適当がいい

 数日前に、西荻窪のミントンハウスで、バンジョーの坂本誠さんとのデュオライブがありました。
が、開始時間になっても坂本さんが来ない。電話をしてもつながりません。
どうしよう、クラリネット1本でやるか、でも数曲ならまだしも全編それでお客さんに楽しんでもらえるかな。としばし考えて、マスターに「バンジョー弾きますよね?」って振ってみたら、即OK。ミントンハウスのマスターは、バンジョーとドラムをやっていて、自分の店でもバンドで月に数回ライブをやってるんです。
とはいえ、演奏活動がメインの人ではないので、持ち曲は多くありません。マスターのバンドのライブの直近のセットリストを広げて、そこから曲を選びます。コード弾きでの伴奏しかできない、と言うのでソロも振らず、僕がずっと休まずに吹き続けるスタイルになりました。
マスターは、デュオで演奏すること自体がはじめてで余裕はなさそうだけど、楽しそうに全力で弾いてくれます。僕も、できるだけ盛り上げるように、普段よりもサービス精神を出して演奏しました。坂本さんの演奏を楽しみに来るお客さんもいるので申し訳ない気持ちもあったし、フラっと店に入ってみたというお客さんもいたので、よけいに。

もちろん、ミスもたくさんありました。でも、トラブルがあったときって一体感がでるもので、結果として、演奏する側も見る側もとてもいい雰囲気のライブになったんですよね。
はじめてのお客さんがよろこんでくれたのが、本当にうれしかったです。ライブにそんなに行くわけでもないと言ってたけれど、これをきっかけに他のお店にも行ってみてくれたらいいな。
いつものお客さんも、すごく楽しかったと言ってくれました。マスターの演奏は、坂本さんと比べたら上手くはないでしょう。でも、音楽を通じて僕らがコミニュケーションするのを目の当たりにして、これが音楽だ!と感激したそうなんです。
マスターも喜んでくれたし、二度とない、貴重なライブになりました。


そう、本当に、音楽って上手い下手じゃないんです。よく会話に例えられるけど、会話だって口の達者な人と話せば楽しいわけじゃない。楽器の達者な人とやれば楽しいとは限らないし、楽器をはじめたばかりの人とやって楽しいこともある。自分が楽しもうと思うかどうかがで違ってくるんですよね。
たぶん先入観みたいなことが大きくて。
たとえばいわゆる「有名」なミュージシャンと演奏することになっても、うまくやれるか心配でいたら、きっと楽しめない。でも、すごい演奏を体験できるかも!とワクワクしていたら楽しいに決まってる。
いわゆる「素人」の人とやることになっても、どうせ下手だろうと思うのと、どうしたらお互い楽しめるかと思うのでは、まったく感じ方が変わるはずです。

そういえば最近、緊張することってないの?と聞かれました。
ほとんどないんです。
だって、上手くやらなきゃとかどう思われるかとかいう感覚がないから、緊張しようがない。起こってもないことを想像したって意味ないどころかきっと演奏も鈍るし、その瞬間にできる最善のことをする以外にはなにもないじゃないですか。それを、出たとこ勝負とか適当とか言うのかもしれないけど、最初からずっとそうやってきました。
僕の初ライブは、吉祥寺のスターパインズカフェでした。ステージで演奏したことなんてないから自分がどんな風になるか想像もつかなくて、それこそ出たとこ勝負の気持ちでいたんです。それが、はじまってみたら、すごくリラックスして楽しめたんですよ。その時、ああ自分は大丈夫だ、と思ったのを覚えています。
最初からそんなで、それから経験を重ね、もはや失敗するためにライブをやるようなマインドでいるので、とっても楽です。


ミントンハウスのライブを楽しんでもらえたのは、どうなるかなんて余計なことを考えずに演奏できたのが大きいんじゃないだろうか。
適当でいい、というか、上手くやらなくたって大丈夫。もっとみんないい加減でいいのに、と真面目に思います。
どんなに練習して準備したって、思った通りになんてぜったいに進まないんだから。
本番で失敗しても平気なように、練習するんですよ、たぶん。

あ、坂本さんはその後ちゃんと無事に連絡取れましたので、また次回みなさまお越しください。



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