あがた森魚&はちみつぱいを見にいった

あがた森魚&はちみつぱいのライブを見に、芝公園のメルパルクホールへ行きました。
歴史のありそうな、立派な建物です。
クラシックのコンサートホールのようで、1500人くらい入るそうです。
ホールでゆったり座ってライブを見るなんて、久しぶりです。
後方の席でしたが見やすく、日本のロックを作ったといえる総勢10人のミュージシャンたちによる、スペシャルなライブを堪能しました。

熱い演奏でした。
途中、はちみつぱいだけの演奏と、あがた森魚のピアノ弾き語りをはさみ、ダブル・アンコール含め2時間半、ノンストップ。
MCも少なく、ほぼ演奏だけでこの長さ。
新曲も多くて、いわゆるリユニオン・ライブにありがちな懐メロ感やお祭り感はなく、気合を感じるステージでした。

ただ残念なことに、音響が悪かった。
全体的に音がモヤモヤして、演奏のディテールがよくわからない。 
バンドは9人の大所帯です。
曲によって楽器の持ち替えもあり、ギター1~3、ドラム ×2 、ベース、ピアノ、アコーディオン、バイオリン、トランペット、とたくさんの楽器の音が混ざりあって、混沌としていました。
さらに最悪なことに、ボーカルが埋もれてしまっている。
バンドの方が音が大きい場面も多く、全体的に歌詞が聞き取れない。
もったいないなー。

と思いながら聞いていて半分くらい経ったところで、はちみつぱいが長尺プログレ演奏をしてステージを去り、あがたさんが一人でピアノの前に出てきて、マイクをにぎりました。
それまでは、ほぼ曲のタイトル紹介だけだったのが、ここで、客席に向かって語りかける。
なんて真剣なんだろう。
ここまでの熱量を持ってステージから話す人を、他に知りません。
その真摯さに、感動します。

そこからの演奏も、素晴らしかった。
コードをポロンポロンと鳴らして語りはじめ、「冬のサナトリウム」、断片的なフレーズのリフレイン。
途中で何度も、むせび泣くような、リミッターが外れてどこまでも駆け上るような瞬間がやってきます。
ああ素晴らしい。
やはり音環境は悪くて、弾き語りなのに歌詞がよく聞き取れない。
それでも、あがたさんが歌にこめる感情は、しっかりと届いてくる。
ここまでむき出しで歌う人は、そうはいない。
あの魔法のような声に、ありったけの気もちをこめて。

またはちみつぱいが加わり、ラストまで。
音は混沌としたまま、歌詞や曲全体は不明瞭でも、ときたまその中から、あがたさんの感情が立ちのぼってくる。
「星のふる郷」「骨」「赤色エレジー」。
ダブル・アンコールの後、10人のミュージシャンがステージに横一列で並びます。
あがた森魚とはちみつぱいが『乙女の儚夢』をレコーディングしてデビューしたのが45年前。
僕の人生より長いあいだ、この人たちは音楽をやってきたのか。
すごいな。


音がよくなかった、ってさんざん書いたけれど、いいライブに間違いありませんでした。
あがたさんは、いつも本気です。
嘘がない。
たとえギターの演奏が怪しい瞬間があっても、つくろわない。
どうやって全部を出し切れるか。
どこまで登りつめられるか。
きっと、そんなことを考えてやっている。
音を外すことすら恐れずに、上手く演奏しようなんて、思ってもいないんじゃないか。

まっすぐな表現は、伝わるものです。
それを、あがたさんはいつも教えてくれる。
自分もこれからもずっと、そんな風にやりたい。
あらためて、そう思わせてくれたライブでした。
行って良かった。

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